その腕を離さないまま
彼は外へ飛び出る。
ターゲットはすぐに確認できた。
夏休みの友
トライデントモスキートのDr.シャマル
といえば聞こえはいいが
普通の女好きのおっさんだ。(隼人談)
今日もすれ違う度に
女の人を口説いている。
「・・シャマル!!」
呼び止めて、少年は掴んだままのの手を
医者の前へ突き出した。
「ん?何だなんだ可愛い子じゃないかっ」
白く華奢な腕の持ち主である少女を見て
おっさんはデレデレした。
それを片手でぐいぐい押しのけ
用件だけを隼人は述べる。
「ちょっと火傷したかもしんねえ・・診てくれ」
屈辱そうに言って、顔を背ける。
シャマルは医者らしい目つきになって
煙草で火傷した指先を見つめた。
「ん・・これはキスでもすりゃ治る」
医者だとは思えない発言後
の指先にキスしようとするシャマル。
「やめろっ!キスで治るなら俺がしてやる」
医者を頼ったくせに
ダイナマイト野郎は彼を突き飛ばした。
そして火傷で少し腫れてきた彼女の指先に
キスしようと屈む。
「隼人は馬鹿だなー。
キスで治るなら医者は要らないだろ。
冷やして放置しときゃ治る」
背後から腹だたしい雑音が聞こえたので
隼人は再びを引っぱって家へ戻った。
・・・
「無茶すんなよ、バーカ」
口ではそう言いつつも
隼人は少女の指先をそっと冷やしていた。
「・・バカじゃないもん」
も素直になれない性質で
”ありがとう”が言えなかった。
それでも彼女は
こんなぶっきらぼうな彼に好意を寄せていて
その想いが進行形で大きくなるのを感じていた。
火傷のせいもあるのか
触れられる指先が熱い。
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