学校へ着くなり、あたしは友達に囲まれた。


案の定、話題は彼氏と別れたこと。


こうゆう話ってすぐに広まるんだから、


半ば投げやりになりながら思う。





「篠田くん最低よねっ・・なにも殴ることないじゃない」





篠田 悠磨 : しのだ ゆうま


例のモトカレ。





「本当!・・、頬に痣が出来てるっ!!」





みんな心配してくれている、それは分かっているけれど。


あたしは思い出したくもなかった。


彼と付き合っていた、その事実さえ消し去ってしまいたかった。


愛想笑いだけ浮かべる。


それに気付いた友達の1人が話題を変えてくれる。





「あたしい、今朝スクアーロに似た人に出会っちゃった」





話題が変わってほっとするのも束の間、


スクアーロ・・聞いたことある響きに


あたしは耳を欹てた。





「漫画に出てくるそのまんまで、長身長髪


あのきりりとした目・・」





うっとり、という言葉がぴったりな顔で彼女は言った。


スクアーロ、長身、長髪、今朝、漫画





「ね、KY.スクアーロって誰?」





身を乗り出して聞くと、周囲から


KYじゃなくてS(スペルビ)!と訂正を受ける。


どうやら話によると週間少年ジャ○プ連載中


REBORN!という漫画の敵方らしい。


それでも読者からの人気があるとか、ないとか。





そのS.スクアーロとうちの変質者KY.スクアーロが


同一人物だとするのは少し癖があるし


簡素に纏めすぎる気がして、それ以上は聞かなかった。





眠気を誘う授業が始まる。


いつにも増して必死にノートを取った。


そうしている間は何も考えずにすむ。





自分の席から丁度右斜めの延長線上に


篠田悠磨。


会話を交わすことは勿論、


目を合わせることさえもない。


相当非難の目を浴びている彼に対しては


ざまあみろ、という気持ちと


自分も悪くないことはない、という気持ちが交差する。











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