むかしむかしのお話です。
とある小さな王国に可愛らしい姫君が誕生しました。
その子はみんなから愛されるようにとの願いをこめ
“”と名づけられました。
そしてその願いは天に届き
国民から深く愛されておりました―――
「ねえ、お城の外に行ってみたいの」
テラス越しに見える外の風景は
王女であるにとって新鮮で憧れの地でした。
いつか城を出て、自由に走り回ったりすることが
彼女の夢でもあり希望でもありました。
「駄目だ。お前は自分の立場をわきまえろ」
彼女の希望を傍で聞いていた王様は
きっぱりと言い放ちました。
王様がの願いを聞き入れることはありません。
ぶっちゃけ心配性なのです。
しかし親の心、子知らずといいますか
彼女は真夜中こっそりと城を抜け出しました。
抜き足差し足忍び足で、左右にも目を光らせ
城内のものだからこそ分かる秘密のルートを通ります。
今宵が初めてのお忍びというわけではないのですが
やはり城の外というのは興奮するようです。
彼女は真っ先に森の中へ足を進めました。
以前、とてつもなく盛大で神聖な湖を発見したのでした。
今夜の目的地はもちろんそこです。
森の中を歩くには鬱陶しすぎるドレスを引きずり
は湖のほとりに辿り着きました。
綺麗な満月が湖の丁度真ん中辺りの水面に映っていて
それはそれは幻想的でした。
うっとりとそれを眺めていると
水面の月に向かって、ひゅんと小石が投げられました。
崩れゆく世界の中で
ぽちゃん、と音をたてた小石は湖に吸い込まれ
満月は規則正しく波紋を広げました。
「誰かいるの?」
小石の投げられた方角に目をやると
綺麗な金髪をした少年――同い年くらいだろうか――が
ひっそりと手足を縮こめて座っているのでした。
はゆっくりとその少年の方へ歩み寄りました。
「あなた、名前は?」
彼女は珍しいものを見るかのように
まじまじと彼を見つめて言いました。
それもそのはず、彼女にとって自分と同じくらいの年齢の
城外の“人”を見るのは初めてだったのです。
声をかけられた少年はゆっくりと顔をあげ
星明りに照らされたの顔を見て、ひまわりのような笑顔で言いました。
「俺は、うずまきナルト」
あまりに眩しい笑顔に彼女は目を奪われましたが
すぐに自分の名前を名乗りました。
「ってゆーと・・王国のお姫様と同じ名前だな」
片手で地面の草をぷちぷち引き抜きながら
ナルトと名乗る少年は呟きました。
はその横にそっと腰をおろし
先程と同じように水面に映る満月を見ていました。
彼女は自分がそのお姫様であることを伏せておくことにしました。
言ってしまえば、彼とはもう二度と会えない気がしたのです。
どれくらい時間が経ったのかは分かりませんが
は朝になる前に帰宅し
平常を保たなければならなかったので
ナルトに別れを告げ、もと来た道を歩きました。
誰にも見つからず、自室まで辿り着くと
彼女はすぐさまベッドに潜り込み
今宵の冒険をもう一度思い出していました。
そんな幸せに浸っていたときに
足下に何か異物があることに気づきました。
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