とりわけ目立つわけでもない。


ただ僕は


彼女に恋していた。





彼女を好きなのは僕だけ


彼女を恋すのも僕だけ























ダンスパーティの前日に


僕は彼女をダンスに誘う。





、ちょっと君に話が・・」





そう言って


ダンスの相手になるであろう


彼女の白い腕を掴み


誰も居ない談話室へ向かう。





「話ってなあに?ドラコ」





名前を呼ばれ


少し胸の鼓動が早くなる。





「明日のダンスパーティ・・


一緒に踊ってくれるよな」





“YES”と即答してくれると


思い込んでいた。





「・・ごめんね、もう申し込まれてるの」





すまなさそうに


僕を上目遣いで


あの潤んだ瞳で見上げてくる。





僕の中で


何かがフツフツと煮え立つ。


怒りにも似た


冷めた愛情・・





「・・断わってこいよ」





冷たく言葉を


吐き捨てた。


そんな僕に彼女は何度も


首を横に振って見せた。





「そんなこと・・もう“OK”しちゃったの」





誰だ


僕のに手を出したやつは





誰だ


僕のを僕から奪うやつは





「本当にごめんね、ドラコ・・」





彼女は悪くない。


それなのに謝って


僕の横を通り過ぎようとした。





僕はそんな彼女の


腕を強く強く掴んで


自分の腕の中へと


引き寄せた。





もう


誰の声も聞こえない。