俺の好きな先輩。


彼女のちょっとした仕草に


俺の心臓は大きく胸打つ。





「長太郎くん、今日は何時まで部活あるの?」





満面の笑みで俺を見上げる先輩。


愛しい。





「7時までですよ」





そう言うと





「そっか・・じゃあそれまで待てないから先に帰っちゃお」





独り言のように


俺の目を見ずに先輩は言って


俺の横を過ぎ去った。





誰を待とうとしていたのか


そんなこと聞けるはずは無くて


彼女の香水の香りが俺を孤独にした。





先輩の香水はとてもいい香りで


俺は彼女の香りが好きだ。





放課後、部室に行くと


宍戸さんが腕組みして俺を待っていた。





「長太郎・・お前に話があるんだが」





真剣な顔と声の宍戸さん。


何があったのかと尋ねる前に


彼は言った。





に近づくな」





長く重たい沈黙。


俺は宍戸さんの言う意味が1つも分からなかった。





俺は先輩が好きなのに。


先輩は宍戸さんの彼女というわけでもないのに。


どうしてそんなことを言われないといけないのか。





「俺は・・・先輩のこと好きなんですよ?」





「知ってる、バレバレだからこそ・・のために近づくなって言ってんだ」





先輩のために?」





「そうだ」





宍戸さんは小声になって俺に聞かせた。


俺のことが好きな子たちが


俺が先輩を好きだと知って


彼女を呼び出したらしい。





「俺、相談されたんだよ・・に」





どうして俺に言ってくれなかったのだろう。


どうして宍戸さんなんだろう。


そんなことよりも・・


俺のせいで彼女が傷ついていたなんて


知りもしないで


俺は自分のことで精一杯だった。





だから、だ。


だから先輩は俺じゃなくて宍戸さんに。





「亮ちゃーん!!」





重い雰囲気が漂う部室に


本人がやってきて妙な空気になる。





「あ・・ごめんね、邪魔しちゃったかな」





出て行こうとする先輩を


宍戸さんが引きとめた。


俺のせいで彼女が苦しんでいたのなら


謝らなければいけない。


そう頭の中では分かっていても


実際言葉に出来ない。


俺は唇を噛み締めて2人に深く礼をすると


部室から飛び出た。





先輩を好きになったのは


彼女と知り合えたからだろう。


裏返せば


俺が先輩を傷つけたのは


彼女と知り合ってしまったからだろう。





交差する想いを置き去りに


次の日を迎えてしまう。


俺の下駄箱の中に手紙が入っていた。


ラブレターというものだろう。


興味が無いなら捨てちまえ


宍戸さんならそう言うかもしれない。





封筒を開けた瞬間


ほのかな香水の香りが俺の鼻を突き抜けた。


間違いなく先輩の香水の香りで


俺は封筒の裏を見た。





そこに彼女の名前はなかった。


期待した自分がバカらしい。


同時に手紙から香る香水に


苛立ちを感じた。











君の香水だから好きなのに











「よぉ、長太郎。ラブレターか??」





背後から宍戸さんの声。





「おはようございます、宍戸さ・・」





彼の後ろに先輩がいて


俺は目を見張った。





「長太郎くんって、モテモテなんだね。羨ましいー」





俺の視線に気付いたのか


彼女は言いながら微笑んだ。





傷つけてしまったのに


今までと変わらない笑顔で俺に接してくれた。


ただその笑顔は今までと違って


宍戸さんの隣にだけあるものだろう。





彼女の香水は以前と変わらず


俺を孤独にさせる。


俺はそっと下駄箱に入っていた手紙を握りしめた。


強く強く。





好きな女さえ守れない自分を握りつぶすように。











☆━━…‥・ ★━━…‥・ ☆━━…‥・ ★━━…‥・☆━━…‥・


最初は普通に長太郎とラブ02させちゃおうと思ってたんですけど

急に亮ちゃん出したくなって

そしたら亮ちゃんとイチャ02が書きたくなって (*ノノ)きゃ

ま、言い訳なんですけど


今回のはスラスラ書けましたよ

長太郎の想いが伝わるように書けたかどうかが不安・・・


ココまで読んでくださってあリがとうございました


                                   Manaka