“永遠”の名のついたその本には
と同じ境遇のお姫様が貧しい青年と恋に落ち
二人は数々の困難を乗り越え、愛を育んでいく
という内容の物語が描かれていました。
彼女は物語の中に吸い込まれるようにして
次々と読み進んでおりましたが
何故か一番最後のページだけが故意に引きちぎられており
結末が分からないのでした。
「ねえ、この本の最後ってどうなるの?」
は自分の傍らで同じように読書している
ヒナタに尋ねましたが、彼女は首をかしげ
「すみません・・わたしも分かりません」
と答えて弱々しく微笑みました。
「そう、残念」
姫君は言葉と一緒に少しの溜息を零しました。
自分と似ているヒロインだからこそ
結末はハッピーエンドであってほしいと願っていたのでした。
本を閉じようとするとヒラリ
ブックカバーと本の隙間から紙切れのようなものが
彼女の膝元へ舞い降りました。
そこに書かれた文字は
昨晩の湖で会った彼の名を表していました。
ただ彼の名前が記されているだけなのに
彼女は胸の奥からじわりと温かいキモチが溢れるのを感じました。
そして本に挟まれていたことから
彼が栞として使っていたものなのではないかと
は推測しました。
単語カードに見えたことは胸に秘めておきます。
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