「あいつがこんなにも執着心をもつなんて
・・骸様以来だよ」
深めに被ったニット帽
眼鏡の奥でかすかに笑みを零す少年と
その横でティーカップを手にしながら
溜息混じりに息をつく少女。
「そんなことゆったってね、柿ピー
あたしは別に犬ちゃんなんて・・
それに犬ちゃんはクロームちゃんが好きみたいだもん」
手に持ったカップをテーブルに戻そうと
手を伸ばした瞬間
ドカアッと音がしたかと思うと、諸悪の根源登場。
「ーっ!!」
表情ひとつ変えず
柿ピーと呼ばれた柿本千種は
「どこ行ってたの」とだけ呟く。
一方の彼もそれに答える様子はなく
突然の登場にあっけらかんとしたを
すばやく捕獲。
「ちょっとっ!!犬ちゃん離してよっ・・」
「やらよーっだ」
ジタバタする彼女をぎゅうっと抱きしめ
はたからみれば、動物と少女が
じゃれあっているようだ。
ドスッ
「!」
低く鈍い音に辺りが静まる。
いきなり千種のヨーヨーが犬の顔面直撃。
「いってーびょん!!何するんらよっ、柿ピーっ!!」
束の間の沈黙というに等しく
先ほどのように、犬は騒ぎ出した。
「どこに行ってたのか、聞いてるんだけど?」
表情からは汲み取れないが
確かにニット帽眼鏡は怒っている。
犬に抱きしめられたまま
は心配そうに二人を交互に見つめた。
「んあ!ちょっくら研究してきたんらびょん」
何の?と問い返す前に
彼はぱんぱんに膨れ上がったビニール袋を
ぐいっと千種の前に出してみせた。
どんなプレイがお好き?
「俺さー、に似合うかなと思って」
じゃーん、と得意げに見せられたのはメイド服。
彼女は言葉を失った。
それに気付いているのか、いないのか。
四次元ポケットのように次から次へと
ビニール袋の中からコスプレセットが飛び出してくる。
「犬ちゃん・・あたし着ないよ?
クロームちゃんにあげなよ
あの子あんまし服持ってなさそうだもん」
自分が着たくないがためには
クロームに譲るという提案をしてみたのだが
それは逆に彼を挑発することになった。
「俺はあの女に着せるために
持ってきたんじゃねーびょん」
鋭く伸びた爪が光に反射してギラリと輝く。
その指は彼女の頬を捕らえ、逃がさない。
「犬ちゃ・・んっ」
目を閉じる時間さえも与えられずに
犬はに口づけをする。
「俺は、のことしか考えてねぇんらよっ」
言ってから、照れたのか
ぷいっと顔を彼女から背ける。
それを可愛いと思ってしまう自分がいることに
は気付かされた。
その一部始終を見せられてしまった眼鏡少年は
腹いせにヨーヨーをぐるぐる振り回していた。
を好きなのは犬だけではなかったらしい。
「柿ピーにはこれらびょん」
千種の思いなんてつゆ知らず。
とても嬉しそうにビニール袋から何やら取り出す犬と
実はほんの少し楽しみにしている千種。
取り出されたのはセーラー服。
「・・・」
柿ピーは無言だったが
セーラー服を握る手はわなわなと震え
怒りがピークに達したと誰もが思った。
だが「犬、よくやった」とだけ零すと
大切そうにセーラー服を抱え
床にぽたぽたと鼻血まで零しながら去っていった。
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本当は裏にしちゃおうとか思ってたタイトルだけど
犬で裏ってなるとキバと被るなあ
てゆか、この二人似てる (´д⊂)
とまあ試行錯誤した結果の作品です
柿ピー放置したまま、いちゃいちゃしたいのも
山々だったんですけど
これを逃したら柿ピーの鼻血は書けない!
と判断したためヒロインが放置されちゃいました←
ココまで読んでくださってあリがとうございました
Manaka