声の主はもちろん、お間抜けカンクロウ。 俺と彼女を指差してぴくぴくしている。 「いつの間にそうゆう関係になったんだよ!? なんかっ・・むかつくじゃん」 彼の気持ちも分からなくはない。 自分の婚約者が実の弟とふれあっているのだから。 といってもまだ序章。 俺は少しからかってみたい衝動にかられたが 横で小動物のようにオロオロする彼女が目に入り それだけは勘弁してやろうと決めた。 「夕飯だと言ったな」 確認するように言ってから とカンクロウを残したまま立ち去った。 砂時計の砂は全て流れ落ちた。 彼女に触れられていたそこは もう先ほどのような感覚を帯びてはいなかった。 残ったものは記憶だけ。 夕飯をテーブルに横一列に着いてすませる。 まるで最後の晩餐のように。 横一列で食すのは何かと不便だった。 醤油をとってほしくても いちいち手渡しで隣へ隣へと 回していかなければならないのだ。 最近、中華テーブルというのだろうか 中心がぐるぐる回るテーブルが欲しいと思う。 あれはきっと便利だ。 夕飯を食べても眠たくならないのは 俺の中に化け物が住み着いているから。 そんなこと分かってはいても 独りこうして月を見つめながら夜を明かすのは 決して楽しいことではなかった。 「ここにいたのか」 全く気配はしなかったのにと思いつつ 声のする方を見やれば 人形遊びばかりしている兄よりは 断然頼れる姉の姿。 彼女は俺の隣にすっと腰を下ろした。 「何か聞きたいことがあるんじゃないのか?」 そう言ったテマリは月明かりに照らされているからか 女性としての魅力が増して見えた。 Q |